大動脈瘤の手術
大動脈瘤とは 大動脈瘤の症状 大動脈瘤の原因 大動脈瘤の検査 当院における大動脈瘤の治療 ステントグラフト治療の症例 当院でのステントグラフト治療の流れ 大動脈瘤の予防
大動脈瘤とは
心臓から送り出された血液は大動脈を通って全身に送られていきます。この大動脈が太く膨れた状態を大動脈瘤といいます。大動脈は部位により胸部大動脈、腹部大動脈と呼ばれており、各々動脈瘤のできやすい部位が分かっています。
大動脈瘤は破裂すると激しい痛みに襲われ緊急手術が必要となります。しかし破裂した状態での手術成功率は低く、破れる前に治療することが大変重要です。
- 正常時
- 大動脈瘤
大動脈瘤の症状
以下の症状は大動脈瘤を疑うサインです。しかし、大動脈瘤は破裂するまで症状が現れにくく、発見の難しい病気です。
胸部大動脈瘤の場合
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声がかすれる(嗄声)
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胸背部痛
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嚥下障害
腹部大動脈瘤の場合
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お腹の拍動
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腰の鈍痛
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脚のしびれ
大動脈瘤の原因
大動脈瘤の多くは動脈硬化により引き起こされます。動脈硬化は加齢や高血圧・高脂血症・糖尿病・喫煙などにより促進されますが、特に喫煙は大動脈瘤の一番の原因と言われています。50代から徐々に増加しはじめ、男性は70代・女性は80代が発症のピーク年齢です。
大動脈瘤の検査
大動脈瘤の一番怖いところは、無症状で進行し破裂により突然死をきたすことです。手遅れにならないよう早期発見することが大切です。当院では大動脈瘤の早期発見のために下記の検査を行っています。
- 実際に大動脈瘤が大きくなっていく様子(CT画像)
当院における大動脈瘤の治療
治療法の種類 それぞれの治療法のメリットデメリット 治療法による 術後の傷口の違い
大動脈瘤は現在2種類の治療法があります。医師が患者さんの状態や希望に沿って治療法を選択します。
1.治療法の種類
人工血管置換術
大動脈瘤ができている部分を人工血管に置き換える手術です。直接縫い付けるので胸やお腹を切開します。
- 胸部大動脈瘤
- 腹部大動脈瘤
ステントグラフト内挿術
当院で新しく始めた治療法です。カテーテルを使い、脚の付け根の血管から大動脈瘤の中にステントグラフト(金網のついた人工血管)を挿入する手術で、動脈瘤を内側から封鎖して破裂を予防することができます。胸部大動脈瘤に対する手術をTEVAR(ティーバー)、腹部大動脈瘤に対する手術をEVAR(イーバー)と呼びます。
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脚の付け根の血管からステントグラフトを瘤の位置まで誘導する。
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ステントグラフトの位置を合わせて、そこから片方の脚の血管側に向けて広げる。
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同様に反対の脚の血管からも、ステントグラフトを瘤の位置まで誘導する。
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最初に広げたステントグラフトと連結させて、反対の脚の血管側に向けて広げる。
このようにステントグラフトを内張りすることにより、瘤の内部に血液が流れなくなり破裂を予防することが出来る。
2.それぞれの治療法のメリットデメリット
メリット | デメリット | |
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人工血管 置換手術 |
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ステント グラフト 内挿術 |
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※エンドリークとは
エンドリークとは、ステントグラフトを挿入した後にも動脈瘤内に血液の流入が残存することです。この場合、動脈瘤の拡大の恐れがあるため、コイルによる血管の閉鎖や場合によっては開腹手術が必要になることもあります。
3.治療法による術後の傷口の違い
- 人工血管置換術
- ステントグラフト内挿術
ステントグラフト治療の症例
1.胸部大動脈瘤(TEVAR)
- 術前のCT画像
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動脈硬化により血管が拡大している。
(赤矢印)
- 術後のCT画像
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ステントグラフト治療により瘤の内部への血流(赤矢印)が無くなり、破裂のリスクが無くなった。
2.腹部大動脈瘤(EVAR)
- 術前のCT画像
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動脈硬化により血管が拡大している。
(赤矢印)
- 術後のCT画像
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ステントグラフト治療により瘤の内部への血流(赤矢印)が無くなり破裂のリスクが無くなった。
当院でのステントグラフト治療の流れ
大動脈瘤の予防
生活習慣を見直し、動脈硬化を進めないよう適切な食事と適度な運動を心掛けることが大切です。また、大動脈瘤は無症状で進行していくため、前述の検査などを含めた健康診断をきちんと受けることも推奨しております。瘤が大きくなっていくスピードは症例によってさまざまですが、早期発見・早期治療のためにもこれらの検査は大変重要です。