心臓の病気について
心臓の働き 心臓病の種類 症状からみた心臓病と検査 あなたの心臓はどこが悪いでしょうか? あなたのリスクファクター(危険因子)は? 症状がでたときは 心臓病に優しい生活
心臓の働き
心臓は血液を全身に送り出すポンプの働きをしています。
心臓の大きさは握りこぶし程度です。心臓自身に酸素と栄養を含んだ血液を運ぶ血管を冠動脈といい、太い3本の枝があります。(下記図参照)
心臓病の種類
動脈硬化とは文字通り血管が硬くなる病気ですが、硬くなるだけでなく、脂肪やコレステロールが固まってできたプラークが血管の内側にこびりついて血管がせまくなったり、プラークが大きくなって破れると、そこに血栓ができて血管がつまってしまいます。血管がせまくなることで血液の流れが悪くなり、必要な酸素や栄養が全身にいきわたらず、臓器や組織に多きな負担がかかり機能が失われていきます。動脈硬化が進行すると「狭心症」「心筋梗塞」といった心臓の病気や「脳梗塞」などの病気を引き起こします。
虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)
心臓自身に栄養や酸素を送っている冠動脈が動脈硬化などで狭くなり、心臓が酸素欠乏に陥る状態(狭心症)や、血管が詰まってしまって、心臓の一部が死んで動かなくなる状態(心筋梗塞)があります。 生活習慣病とかかわる重大な病気で、最初の発作で『突然死』することもあります。
弁膜症
心臓の中には、血液の流れを一方通行にして逆流を防ぐ弁が4つあります。これらの弁の障害による病気が弁膜症です。これには、弁が硬く開きにくくなる「狭窄症」と、弁が閉じきらずに血液が漏れてしまう『閉鎖不全症』があります。多くは小児期にかかるリウマチ熱という病気の合併症で、20歳代で弁の異常が進行し、30~40代になるとそれがはっきり現れるようになります。 弁膜症には、先天性のものや、動脈硬化などの結果生じるものもあります。
不整脈
心臓は規則正しい電気的刺激とその伝導で働いていますが、この刺激が乱れたり断線したりして心臓が不規則に収縮する病気です。無症状のこともありますが、動悸として感じることが多く、時には前触れなく失神することもあります。
心不全
心不全というのは病名ではなく、状態をあらわす言葉です。すなわち、ポンプとしての心臓の働きが弱り、そのため全身に必要な血液が供給されない状態、あるいは血液の流れが滞る状態のことをいいます。 どのような心臓病であってもポンプ機能が異常になると『心不全』になります。 心不全といわれたら、原因となる疾患がかくれていないか、はっきりさせることが重要です。
症状からみた心臓病と検査
症状は個人によって異なります。主治医と相談しながら検査をしましょう。
胸痛
1. 痛みの特徴
心臓の痛み、特に虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)による痛みは下のような特徴があります。
2. 痛む場所
心臓病だと、こんなところが痛みます。
3. 狭心症の場合
- 持続時間
- 2~10分
- 冠動脈の動脈硬化に
伴う場合 - 多くの場合、歩行、入浴、食事のときなどに生じます。安静にすると治まりますが、繰り返し起こります。ニトログリセリン(ニトロペン)をなめると数分で治まります。重症になると安静時にも起こる様になります。
- 動脈のけいれんに
よる場合 - 主に安静時に起こります。寒冷による刺激、就寝中、午前中によく起こる傾向があります。
4. 心筋梗塞の場合
持続時間30分以上続く場合は、狭心症ではなく心筋梗塞である可能性があり、冷や汗、吐き気を伴います。ニトログリセリン(ニトロペン)は効果ありません。
胸に痛みのある人の検査
胸に痛みのある方には、下記の検査を受けていただきます。
- 心電図
- 運動負荷心電図
- 心臓カテーテル検査
- 心臓超音波検査
- 心臓CT
5.動悸
1. 一瞬ドキンとして脈がとんだように感じる。
「期外収縮」という不整脈の一種かもしれません。治療しなくてよいものから、命に関わる重症のものまでいろいろあります。
■どんな期外収縮がどういう頻度で起こるか調べます。
2. 突然脈が早まり、ドキドキして胸苦しくなるが、突然治まる。
「頻脈性の不整脈」
タイプ:発作性上室性頻拍症 / 発作性心房細動 / 心室頻拍など
■どのタイプの頻拍症がどういう頻度で、どのくらい持続するかによって大きく治療方法が異なります。
3. 脈がゆっくりになり、めまい、時に気を失う。
→「洞不全症候群や房室ブロックなどの徐脈性の不整脈」が疑われます。
■突然死の原因となるため早急に人工ペースメーカーの植え込みなど、特殊な治療が必要になることがあります。
4. 心臓の鼓動がドキドキと感じる。何かしていると気づかないが
静かにしていると気づく。
→心臓以外の病気の可能性が多いと思われます。
例:貧血 / 甲状腺ホルモン分泌過剰 / 精神的ストレス
動悸のある人の検査
動悸のある方には、下記の検査を受けていただきます。
- ホルター心電図
- 血液検査
- 心臓電気生理学的検査(入院)
- トレッドミル運動負荷検査
- 心臓超音波検査
6.倦怠感、息切れ、むくみ
この場合「心不全」が疑われます。次の検査で確認します。
動悸のある人の検査
動悸のある方には、下記の検査を受けていただきます。
- 心電図
- 胸部X線写真撮影
- 血液検査
- 検尿
- 心臓超音波検査
あなたの心臓はどこが悪いのでしょう?
診察を受ける際、「医師が知りたいあなたの症状のポイント」チェックシート表を参考にしてご自身の症状を医師に伝えていただけると、診断の目安となります。
あなたのリスクファクター(危険因子)は?
虚血性疾患の原因となる冠動脈の病変には「粥状動脈硬化症」といわれるものがあります。これは、動脈の壁にゴミのように沈着物(血液成分、脂肪など)が付着したり、細胞が増生するためにできます。そうすると、血管の内腔が狭くなり、血栓ができると血液の流れが遮断されて梗塞を起こします。
欧米では死因の第1位が粥状動脈硬化症による虚血性心疾患です。日本でも癌に次いで第2位を占めています。
加齢、性別(男性に多い)、遺伝的素因など、避けられない要素は別として、できるだけ危険因子を少なくすることがあなたの心臓にとって大切です。
下記の「あなたのリスクファクターはいくつ?」チェックシートで早速チェックしてみましょう。
症状がでたときは?
どんな痛みか
虚血性心疾患に伴う胸痛は、「キリキリ、ズキズキ」というはっきりした痛みではなく、「何となく漠然とした痛み」、「締めつけられるような感じ」、「重しで押さえつけられるような感じ」というふうに表現されます。また、痛みではなく動悸や息切れ、倦怠感も心臓発作の予兆のことがあります。
発作の持続時間
大きな特徴のひとつは、多くの場合、発作で苦しいのは数分で、それ以外の時には全く無症状なことです。治まったから大丈夫だと考え、病院に行く時期が遅れてしまうことがあります。
いつ起こるか
運動や興奮で発作が起こるものを労作性狭心症といい、心臓を養っている血管である冠動脈の狭窄が原因です。
安静にしているときや、寝ている時に発作が起こるものを安静時狭心症といって、多くの場合、冠動脈のけいれんが関係し、心筋梗塞の前兆のことがあります。
症状に注意して早めに専門医に相談しましょう
放置すると?
放置しておくと、症状のあった人の約1割が心筋梗塞を起こしています。この時期にできるだけ早く専門医に相談することが大切です。
すでに狭心症と診断された方への注意
症状の変化に注意しましょう
- 軽度の労作でも発作が起こりやすくなった
- 胸痛の程度が強くなった
- 発作の回数が増えた
- 労作がなくても発作が起こるようになった
- 発作の持続時間が長くなった
上記の症状が出現した場合すぐに専門医の診察が必要です
狭心症の治療
通常は内服薬で発作の予防をします。発作の時には、ニトログリセリン(ニトロペン)を舌下で使用すると症状が和らぎます。早めに受診をしましょう。
しかし、次の場合は、心筋梗塞に移行している恐れがあります。
- 発作が20~30分以上も続く
- 顔色が悪い
- 冷や汗が出る
- いままでにない強い痛みがある
かかりつけ医に連絡しましょう!
高齢者、糖尿病の患者さんや脳梗塞になったことのある患者さんの場合、胸痛を感じにくくなっています。息苦しいとか、疲れやすい、食欲がなくなったといったからだの不調が現れた時には主治医に相談して心電図等のチェックをする必要があります。
心臓病に優しい生活
- 急な温度変化や季節の変わり目には要注意です。冬の朝、屋外に出るときは厚着を忘れずに。風呂場や夜のトイレは前もって暖めておきましょう。トレイは洋式にし、力まないようにしましょう。便秘は緩下剤などで調節しましょう。風呂は、熱すぎないお湯に短時間入るか半身浴とし、湯冷めしないように気をつけましょう。
- 食事は3食均等に、塩分、カロリー、栄養のバランスを考えて、ゆっくり食べましょう。腹8分目を心がけましょう。食後すぐ仕事をするなどの余裕のない生活は禁物です。間に休憩を入れましょう。寝る前3時間は食べないようにしましょう。
- 夜更かしせず十分睡眠をとってください。夜間よくトイレに立ったり、就寝中に息苦しくなったりするのは心不全の疑いがありますし、早朝の胸痛は不安定型狭心症(心筋梗塞になりやすい狭心症)の疑いがあります。主治医に相談しましょう。
- 旅行については、外来時に医師と相談してください。外出されるときは、余裕を持って行動し、ストレスをためないよう心がけましょう。
家族に知っておいてもらうこと
心臓病とのつきあいは、家族や周囲の人に応援してもらいながら一緒にしましょう。例えば心臓病の食事は病人に特別なものではなく、家族全員の生活習慣病予防にもなります。緊急時には本人は動けないことも多く、周囲の人が対処の方法を知っておくことが重要です。
診察には家族の人もぜひ一緒に来てください。家族で血圧、体重を測り、脈を取れるようにしましょう、脈は図のように人差し指、中指(薬指)を手首の親指側に当てて1分間計ります。
脈の数と乱れに注意します。いつ、何をしていた時、どの程度の強さで、何回発作があり、服薬したか《ニトログリセリン(ニトロペン)を何回なめたか、など》を記録して、家庭での様子を把握することが病気の早期発見につながります。